塗装中や塗装乾燥後に縮み(リフティング)が起きる原因と対応策

塗装中や塗装乾燥後に縮み(リフティング)が起きる原因と対応策
いざ塗装を始めようと、旧塗膜の上へ塗装をすると突然縮れてしまうことがあります。
縮れてしまえば、上塗りをするだけでは絶対に解決できませんし、かと言ってどうすれば良いのかも分からない。
そもそもなぜ縮みは発生するのかすら分からない。
今回は、縮みの発生原因と対応策、処置の方法などについて解説していきます。

縮みとは?

旧塗膜(ボディ側の塗膜)と上塗り塗料の相性が悪い場合、上塗りすることで旧塗膜と上塗り塗料が反応を起こし、縮れてしまいます。
様々な要因が考えられますが、最も分かりやすい例で解説していきます。
旧塗膜、もしくは下塗り塗料が1液タイプのラッカー、上塗り塗料が2液タイプのウレタンとします。
ラッカーは1液タイプで対溶剤性が弱く、ガソリンなどがかかるだけでシミになったりするほど弱いものです。
これほど弱い塗膜の上へ2液型の塗料を塗装すると、上塗りの2液塗料が反応して縮れを起こしてしまいます。
2液塗料に硬化剤が入っているということは、シンナーの蒸発と硬化によって塗装が締まる(痩せる)特性があります。
乾燥が不十分な1液の下塗り塗料に上塗りの2液が密着すれば、手で紙などをわしづかみしたように塗装がギュッとしぼんでしまいます。
これが縮みという現象です。
先ほど解説した事例は、あくまでも分かりやすい例を紹介しましたが、縮む原因は1液の上へ2液を塗装することだけではありません。

塗装表面に対溶剤性の弱い塗料が塗装されている(劣化したエナメル、アクリル、ラッカーなど)

ポイントは「劣化した塗膜」という点です。
缶スプレーを使って塗装する場合、ラッカー塗料で塗装されることが多いため例として挙げましたが、エナメル、アクリル、ラッカー、この3種類の塗料であれば、どのような塗料でも縮れてしまうでしょう。
共通するポイントは、全て1液タイプということです。
ウレタンでも1液タイプはありますが、対溶剤性が強いため、上塗り塗料に使われる強い溶剤を塗装しても縮れることはありません。
問題は、エナメル、アクリル、ラッカーなどの対溶剤性が弱い塗料を使うということです。
なにもこれらの塗料を使うべきではないと言っているわけではなく、これらの塗料を塗装するにあたって、正しい使い方をしていかなければならないのです。

劣化している塗膜に直接本塗装するのではなく、まずは2液型のサーフェイサーを塗装しよう

サーフェイサーには「塗膜にフタをする」効果があります。
劣化した塗料の上へ2液のサーフェイサーを塗装してフタをすれば、本塗装で縮れることはほとんどありません。
気を付けなければならないのは、サーフェイサーを研ぐ際に下地(旧塗膜)が出てしまわないようにすること。
ここで下地が出たまま上塗りを行えば、劣化した旧塗膜の上へ塗装することとなり、必ず縮れでしまいます。
ここで縮れてしまえば、上塗り塗料が乾燥するまで待ち、新たにサーフェイサー工程からやり直しとなってしまうでしょう。
もし下地が出た場合には、面倒でももう一度サーフェイサーを塗装するのが、失敗の無い方法です。

対溶剤性の弱い塗料の上にパテを盛るとパテキワが縮む

今度はパテですね。
パテも溶剤が含まれていますから、同じように縮れてしまいます。
塗料と違う点は、「パテのキワが縮れる」という点です。
塗料と違ってパテは硬いですから、全体が縮れるということはほとんどありません。
しかし、パテキワは旧塗膜の影響をモロに受けるため、パテキワだけが縮れてしまうのです。
パテもサーフェイサーと同じように塗装上からフタをする性質はありますが、パテキワが縮れてしまえばそこから水が侵入してすぐに剥がれてしまうでしょう。

対策は塗膜の剥離、もしくは研磨。サーフェイサーを塗装する方法も

旧塗膜のフェザーエッジ次第ではありますが、どの層が悪さをしているかによって対策は変わります。
トップコートや2層目が悪さをしていればサーフェイサーを塗装してパテを盛っていく以外に方法はありませんが、何層も重なって塗装されている場合には、剥離や研磨を行います。
フェザーエッジを広げ続けていき、原因となっている層が無くなるまでフェザーエッジを取ります。
原因が無くなればパテを盛ってもパテキワが縮れることはありませんから、通常通りの方法で進めていけるでしょう。
サーフェイサーを塗装する際の注意点ですが、この場合はサーフェイサーの上へパテを盛ることになります。
通常の#400程度の番手では、ペーパー目が細かすぎてパテの密着力が最大限に発揮できません。
#400でも剥がれるということは無いと思いますが、パテ盛りのための足付け番手は粗い方が確実です。
#180〜#240程度の番手でサーフェイサーを軽く研ぎましょう。
通常、板金パテを使う場合には#80や#120といった粗いペーパーを使いますが、サーフェイサーの研ぎに粗い番手のペーパーを使えば、一度研ぐだけで下地が出るほどペーパー目は粗いです。
やり直しにならないためにも#180〜#240程度の番手を選択して研いでいきましょう。

硬化剤の配合が少ない塗膜の上に再塗装した

こういった状況になることは珍しいですが、計量器などを使わずに目分量で配合したりすると、このような現象が起こります。
2液タイプで硬化剤を規定量よりも明らかに少ないまま塗装してしまうと、塗膜の硬化不良が起こり、いつまでも硬化しません。
中途半端に硬化して、塗膜の大半は乾燥しかしていない状態ですから、この上に強い溶剤の塗料を上塗りすればすぐに縮れてしまうでしょう。

硬化不良の場合は、研磨やサーフェイサーでは対応不可能

水研ぎであろうが空研ぎであろうが、硬化不良の塗膜を削ることは非常に難しいです。
難しいと言うよりも、ペーパーを当てるとすぐにペーパーに塗料が食いついてほとんど研げなくなってしまうのです。
固まりきっていない塗料は柔らかく、乾燥していると言ってもカチカチではなく、硬いゴムのようになっています。
グラインダーなどの鉄を削るような道具であれば塗膜も簡単に削れますが、鉄板にダメージを与える可能性があるため、あまりオススメは出来ません。
サーフェイサーで上からフタをしてしまおうと考えるかもしれませんが、下地が柔らかく硬化不良を起こしているため、塗膜の中に水分が残ったままになっています。
上塗りで綺麗になっているように見えても、内部はボロボロ(見た目は良いが塗装の品質は悪い)で、時間が経てば次第に剥がれてしまうでしょう。
さらに危険なのは、この剥がれが目に見えず、先に内から剥がれてしまうため、塗装の劣化が分かったときには内側は錆びてボロボロになっているでしょう。
旧塗膜に残ったままの水分が、上塗り塗料により行き場を失い、塗膜の中で鉄板に影響を与えます。
こうならないためにも、硬化不良の場合はサーフェイサーでフタをすることも止め、研ぐことも止め、剥離すると言う手段しかありません。
剥離剤を使うか、サンダーなどで剥離するか、とにかく硬化不良の対応が一番大変です。
2液は塗膜は強力ですが、その配合を間違えてしまえば取り返しがつきません。
必ず計量器を使って確実に配合していきましょう。

不均一な乾燥状態にあるときに上塗りした

簡単に言うと、塗料と硬化剤、シンナーの混ぜ方が足りないまま塗装すると、このような現象が起こります。
また、シンナーの選択で乾燥の速度が離れすぎているシンナーを使う場合にもこの現象が発生する場合もあります。
塗料の混ぜ方についてはとにかく混ぜるだけですので詳しくは説明しませんが、シンナーの選択について。
例えば、気温が25℃の時は30℃のシンナーを選択したいですが、手元にあるのは5℃のシンナーとリターダー(シンナーに混ぜる極端に乾燥の遅いシンナー)しかないとしましょう。
30℃と20℃のシンナーを半々で配合すれば、おおよそ25℃のシンナーとなりますが、5℃とリターダーでは25℃にはなりません。
乾燥の速すぎるシンナーと、究極に遅いシンナーでは先に5℃のシンナーが蒸発してしまい、その後にリターダーだけが残ります。
リターダーが残れば塗料の乾燥が遅くなりすぎて、そのまま上塗りするとトラブルにもなりかねません。
シンナーの選択は、乾燥の速度が離れすぎているものを選択するのではなく、必ず近い温度のシンナーを使うようにしましょう。

新車の焼付け塗装が甘い

最後はかなり稀な事例です。
まず間違いなくリコールの対象になるでしょう。
板金工場で焼き付け塗装を行うことは有り得ませんが、新車の塗装は焼き付け塗装です。
この焼き付け時間が短かったり、焼き付け温度が低いと硬化不良になり、上塗りをすると縮れてしまいます。
現在の車に使われている新車塗料でこのようなトラブルになることは少ないですが、1990年代ころまでの車ではそれなりの数はあったでしょう。
当時は2液型塗料が主流でしたが、ちょうど1液型塗料に切り替わるタイミング。
このあたりの車はトラブルも多く、クリアが剥がれるなどの事例が多く発生していました。
2液型が主流になる前は、ラッカー塗料が新車へ塗装されていましたが、この時代の車はほぼ100%縮れます。
現代の塗料はこの時代の塗料に上塗りをする目的で開発されていませんから、相性は最悪で、レストアなどを考えているのであれば全面にサーフェイサーを塗装することは必須となるでしょう。
とは言うものの、当時の新車の塗装が一度も上塗りされることなくオリジナルの塗装を維持しているのであれば、それだけで価値のあるものとなりますから、レストアするのももったいない気もしますが。

まとめ

・劣化した塗膜の上に塗装する場合は、先にサーフェイサーを塗装しておく。
・パテキワが縮むようであれば、フェザーエッジを広く取るかサーフェイサーを塗装する。
・硬化不良の塗膜の上には絶対に塗装はしないで、旧塗膜を全て剥離する
・新車の焼き付け不足は、ほとんどの場合リコールとして処理される。
そんなこと言われても、旧塗膜の状態が分かりませんと言う方、ペーパーを当てて見てください。
ここでペーパーに塗料が食いつけば硬化不良ですし、食いつかなければそれ以外の縮みの原因。
硬化不良以外の縮み発生原因は全てサーフェイサーで対処可能です。