新車の艶消し塗装が大量生産不可能な理由は、新車の不良率と補修率が高すぎるから

新車の艶消し塗装が大量生産不可能な理由は、新車の不良率と補修率が高すぎるから
純正色としては一部車種のみに採用されている艶消し塗装ですが、なぜ大量生産はされないのでしょう。
カスタムカラーとしても人気のある艶消し塗装なのですから、純正色として採用されれば選択肢も増え、ユーザーが集まることはまず間違いないでしょう。
しかし大量生産出来ない原因は、艶消し塗装特有のデメリットからくるものであり、現在の塗装技術では絶対的に不可能と言えるでしょう。
新車に艶消し塗装を施すリスクについてお話していきましょう。

新車の補修率は30%

新車の塗装ラインから出てくると、塗装の品質を確認するために検査官がチェックを行います。
この段階でゴミなどの異物が塗膜内に混入していれば、塗装のやり直しをするか磨いてゴミを取り除かなければなりません。
塗装の品質チェックが完了し、工場から各ディーラーなどへ出荷されるわけですが、陸路で新車を運んでいて傷が付かないと考えるでしょうか?
もちろん傷は付くと思いますよね。
さらにディーラーへ納車され、車を動かすのは人間、触るのも人間なのですから、何かのミスが発生して傷が付くこともあります。
これら全てを合算すると、塗装ラインから出てきた新車の30%程度は補修され、購入したユーザーの手元へ渡るということになります。
購入したユーザーは、まさか新車が既に直されていると考えているはずもありませんが、絶対に傷が付かないという根拠など存在するはずもありません。
車に限らず、生産が完了した瞬間にユーザーの手元に渡るわけではありませんから、常に何らかのトラブルが発生している可能性は存在しています。
ではなぜ艶消し塗装は大量生産不可能なのかということと繋がりが無いように感じるかもしれませんが、ここまでのお話を頭の片隅に置いておき、本題へ入るとしましょう。

艶消し塗装は、塗装後に一切手を付けられない

一般的な艶のある塗料は、ゴミが付着した際にコンパウンドやポリッシャーなどを使って異物を取り除いていきますが、艶消し塗装は磨くと艶が出てしまいます。
指で触るだけでも指の角質が塗膜へ貼り付き、白っぽく変色してしまうこともあるくらい、艶消し塗装は敏感な塗装方法なのです。
さらに、基本的には艶消し塗装は部分補修ができません。
艶消しにもレベルが存在し、艶の「全消し」「半艶」「3分艶」など、塗り方や塗料、気温や湿度によって艶の出方は変わってくるのです。
これを部分補修だけで直そうとしても、人間が補修するのですから絶対に同じ艶を出すことは出来ません。
艶のある塗料はとにかく艶を出して、塗装表面の肌と呼ばれるラウンド感を統一してあげれば補修した箇所は分からなくなりますが、艶消し塗装ではこれらを統一することはできません。
工場から出荷された後の補習でも同じように、磨いて消えるような軽い傷であれば数分程度で消すことができますから、通常の艶有り塗装ではそのまま納車してしまいます。
しかし先ほど話したように、艶消し塗装は磨くことも艶感を統一することも不可能ですから、全てを塗装し直さなければ傷は消えないということになってしまいます。
新車の塗装ラインは、人間が塗装しているのではなくロボットが塗装をし、その現場に人が立ち入ることは禁止されています。
人間が立ち入るだけでホコリなどのゴミが舞うリスクが大きくなりますので、トラブルや点検などを除いて人間が立ち入ることは出来ません。
一度ディーラーなどに納車されてしまえば、もう一度新車のラインへ戻して塗装をするなどということは100%あり得ませんから、民間の板金工場などで再塗装をすることになります。
民間の板金工場では人間が塗装しているため、ゴミが付着するトラブルも多く、塗装不良となるリスクも大きいでしょう。
これではいつまで経っても新車の塗装基準を満たせないまま、何度も何度も再塗装を繰り返さなければなりません。
1度目の再塗装費用はメーカー負担ですが、2度目からは板金工場負担となり、塗装回数が増えれば増えるほど赤字が膨らんでいきますから、新車の艶消し塗装を再補修する業者は現れないでしょう。
仕事を請けてもらえる業者が無ければいつまで経ってもユーザーには納車出来ませんから、必然と大量生産は難しくなってしまうのです。

現在の技術では難しいが、近い将来大量生産が可能になるかもしれない

もちろん憶測ではありますが、車の塗装品質や塗装技術は常に進化を続けています。
60年ほど前まではラッカー塗料が主流でしたが、ラッカーに代わりウレタン塗料が主流になりました。
ウレタン塗料が主流になることによって、塗装の耐久性が飛躍的に向上し、ガソリンなどの溶剤に対してもダメージを受けにくくなり、さらには塗装するだけで艶を出すことも可能になりました。
ラッカーが主流だった時代は塗装自体に艶がなく、大衆車のほとんどは艶のないままで納車されることが普通という時代だったのです。
ロールスロイスなどの一部の超高級車のみが艶を出す工程を行い、何層も何層も塗り重ねてようやく艶を出せるレベルでしかありませんでした。
ウレタンが主流になり、現在は水性塗料が主流になってきています。
新車のほとんどは水性塗料を使用し、排出される汚染物質の軽減に努めており、BMWに至っては新車に粉体塗装を施しているほどです。
10年前までは高級車にしか採用されていなかったキャンディ塗装と呼ばれる塗装技法も、いまではマツダの匠塗り、スズキの軽自動車にまで採用され始めています。
技術や塗料が進化し、ユーザーが求める品質以上の塗装レベルへ進化していますから、近い将来に艶消し塗装が一般的になることもあり得るでしょう。