鈑金職人と塗装職人、実はどちらか一方だけしか出来ないのが一般的である事実。

鈑金職人と塗装職人、実はどちらか一方だけしか出来ないのが一般的である事実。

鈑金塗装工場といえば、事故などを起こした際に修理を行う工場ですが、同じ工場内で作業を行っていますが、鈑金工程と塗装工程に分業している場合が大半です。

もちろん、一人で両方行う職人もいますが、従業員が5人ほどいる工場では分業で修理する方が仕事の効率が良いため、半々で作業をしています。

ちなみに僕は塗装から始まり、違う工場へ鈑金の修行へ行き、現在は一人で両方やっています。

個人的には鈑金よりも塗装の方が好きですね。

両方出来る人が口を揃えて言いますが、この業界に入って塗装から始めた人は塗装が好きだし、鈑金から始めた人は塗装が好きなんです。

塗装は15年やってますけど、鈑金はまだ5年ほどしか経験が無いため、技術や知識ともに浅く、まだまだ学ぶことは多いです。

一人だからこそ妥協は全て自分に降り掛かってきますし、現在では先生もいないため、常に自分と戦ってる感じですね。

少し話は逸れましたが、鈑金と塗装の違いについて説明していきます。

鈑金と塗装における明確な境界線は存在しない。

叩くのは鈑金。

塗るのは塗装。

しかし、明確な境界線は工場によって様々で、鈑金パテを研ぎ終え、ポリパテを盛れば塗装屋へ仕事を移行する場合もあります。

僕が始めて勤めたところでは、鈑金屋がサーフェーサー、ラッカーパテまで入れてようやく塗装屋の仕事となりました。

当時は2液ウレタンだったので、ラッカーパテをポリパテのように厚盛りして使っていましたが、現在ではあのような作業方法は通用しないと思います。

1液型が主流になり、ラッカーパテの上へそのまま塗装すると、塗膜とパテの吸い込み量が異なるため、塗装後にパテの跡がくっきり出てきてしまいます。

個人的には、サーフェーサーからが塗装屋の仕事という認識がベストですね。

パテがどこまで綺麗に研げているのかを見極めつつサーフェーサーを吹きたいですからね。

ラインや面が綺麗に出ていればサーフェーサーは薄く吹けば良いですし、全体的に低ければ厚めに塗ればいい。

最近のサーフェーサーは厚塗りしても大丈夫なように開発されていますので、垂れるほど厚塗りしなければ問題ありません。

さらに、ノンサンディングサーフェーサーと呼ばれる、研ぎが不要になるサーフェーサーもありますので、本当に綺麗に研げているのなら、両タイプを使い分けていくのが理想的です。

鈑金職人の仕事内容

鈑金と言えばハンマーでカンカン叩くイメージですが、現在では自動車の鉄板も薄くなり、ハンマーと当て板のみで成形し直すのも難しくなってきました。

叩き出しも莫大な時間を要するにも関わらず、儲からないという現象が発生しますので、パテを盛るだけで済ませてしまうという場合が多いです。

鈑金工程において、叩きの作業はほんの一部のみで、大半はパテ研ぎ。

中破程度の損傷では、修正機を用いる時間が最も長くなるのが一般的でしょう。

修正機の使用

グシャグシャに潰れていても、部品を交換しただけでは元通りには戻りません。

衝撃を吸収するために、敢えて潰れやすく作られていますので、交換ではなく修正する箇所も必ず発生します。

ぶつかったであろう角度から徐々に引っ張り出し、少しずつ少しずつ全体的に引っ張っていきます。

新品部品を仮合わせし、ボルト穴などが本来の位置に戻るまで何度も修正を繰り返します。

パテ研ぎ工程

例えば、左フロント部分の事故の場合、フェンダーを交換してもドアは鈑金で済ませることも往々にしてあります。

微妙なへこみやフェンダーの干渉によってドアまで影響を及ぼしかねないので、ドアだけを簡単にパテ修復をしていきます。

もちろんこの箇所だけではなく、ヘコミがあればパテを使用すると考えてください。

エクボなどのごく小さなヘコミであれば、塗装研磨後、すぐにパテ盛りへと移行することもあります。

鉄板の状態を見極め、最適な方法で修理していくのが鈑金屋さんです。

サーフェーサー

前述しましたが、この工程は工場によって異なります。

今回は、サーフェーサー工程を鈑金屋さんが行うという前提で書いていきますが、あくまでも目安として捉えてください。

鈑金パテ、またはポリパテが研ぎ終わればサーフェーサーです。

サーフェーサーに硬化剤とシンナーを規定量入れ、3,4回程度吹けば塗装工程へ移行します。

塗装職人の仕事内容

サーフェーサーを研ぐことから始まりますが、サーフェーサーが乾燥するまでは調色作業から始めることが多いです。

調色作業

各車種には必ず、メーカーで定められた規定の数字やアルファベットを羅列してあるものをカラーコードと呼びます。

このカラーコードを参考に調色データを拾い配合していきますが、このデータ通りに配合しても色は合っていません。

黄色や赤などの退色しやすい色であればなおさらのこと、本来の色とはかけ離れているものです。

基本的には配合されている塗料を使用しますが、最終的な微調整ではデータに無い塗料を使用することも頻繁にあるでしょう。

特に青系などの赤みが出る色では、最終的に緑を入れて赤みを消すという方法を用いることも多く、技術や経験が物を言う作業であります。

現在では、塗装面に近づけることで配合データを拾い、データ通りに調色するだけでその色が出るという機械も存在していますが、価格も高価でまだまだ一般的ではないのが実情です。

この機械が安価に入手できるようになれば、調色に要する時間も大幅に削減できるでしょう。

反面、調色技術の衰えが懸念されるところではありますが、2液型の塗料から1液型の塗料が一般的になったのと同じように、調色作業も過去の産物となる日も遠くはないでしょう。

マスキング作業

言わずもがな、外壁のペンキ塗りやプラモデル等でも頻繁に行われている作業です。

こだわる人はとことんこだわりますし、どうせ見えないからぼちぼちで良いという人もいます。

車種や値引きによって貼り方を替えていく作業と言えますね。

塗装作業

調色作業が上手く行けば塗装工程も難しものではありません。

似た色をボカシていくわけですから、1液型の塗料は簡単にボケていきます。

クリヤーに関しては比較的難易度が高いですが、車種に応じた肌作りをするために塗装方法を考えたり、シンナーの希釈を変えたりなど、経験が物を言う工程ではあります。

大別すれば、高級車の肌はツルッとしていて、軽自動車の肌は細かく仕上がっています。

塗り込めば塗り込んだだけ肌が大きくなりツルッとは見えますが、あまりツルッとさせすぎても下品な肌になったりタレてしまったりなど、見極めが難しく、常に技術の向上を余儀なくされる工程です。

個人的にはこの瞬間が一番楽しいですね。

鈑金塗装は総じて自画自賛ですが、クリヤーに関しては遠目に見ても一瞬で艶が判断されちゃいますから。

ポリッシャーでの磨き作業

新車でもそうですが、必ずゴミが付着しています。

新車の塗装ラインは基本的に人の出入りが禁止され、塗装を行っているのも機械です。

もちろん手作業の工程もありますが、外観に関しては機械塗装と思って間違いないでしょう。

修理における塗装は必ず人間が作業しますので、機械よりも圧倒的にゴミが付着しやすく、不良発生率も格段に上がります。

世の中には新車と同じように仕上げてくれという人もいますが、新車の補修率は30%です。

新車は塗装し直していないという思い込みは大間違いで、フツーに直してあります。

なんならコンパウンド使ってガンガンに磨いてあります。

この塗装時に付着したゴミを取り除くために磨き作業を行います。

また、塗装面の肌が本来の肌よりも甘い(艶が無い)という場合にも磨き込んで肌を合わせます。

磨き作業が終われば、洗車をして納車、完了というのが鈑金塗装の一連の流れです。

最後に

僕もその一人ですが、車好きの若者は自分で車を直したい(塗装したい)という考えからこの業界に入る人も多いですが、希望する業態で働けると思ってはいけません。

塗装を覚えたいにも関わらず、人手不足により鈑金見習いとして働くこともありますし、その逆も往々にしてあります。

面接や面談の際には必ず、業務内容を確認し、希望する流れで仕事が可能かどうかを問い合わせましょう。

また、半年や一年で一人前になれるなんて甘い世界ではありません。

もちろんその心意気は大事ですが、20年やっても30年やっても半人前という自覚が必要です。

常に技術の向上に努め、新しい情報に敏感になり、古い技術にいつまでもとらわれていてはいけません。

事故が減り、この業界も以前ほどの景気の良さはありませんが、何かに突出した技術や業態を持つ会社が勝ちます。

自分にも言い聞かせていますが、昔ながらの技法を保ちつつ、常に革新的なアイデアを閃くように努力を怠らないようにしましょう。