【塗装のプロが解説】ラッカー塗料や水性塗料、ウレタン塗料の違いについて

【塗装のプロが解説】ラッカー塗料や水性塗料、ウレタン塗料の違いについて

自動車の塗装には、おもにウレタン塗料と呼ばれる塗料が使用されています。

しかし近年、環境保護の観点から新車時には水性塗料で塗装を行っていたり、補修塗料としても水性塗料を取り入れる工場が増えてきました。

それぞれの塗料にはメリットやデメリットが少なからず存在していますので、各塗料の方向性について解説していきます。

ラッカー塗料

新車塗装の段階でラッカー塗料が使用されていることはほとんどないでしょう。

しかし、ラッカー塗料の性質上、極端に乾燥が速いため作業性が飛躍的に向上するメリットがあります。

ワイパーブレードや無塗装ミラー、バンパーなど、いち早く美観を取り戻すにはラッカー塗料の使用が得策でしょう。

特にワイパーブレードは錆びやすく、中古車などの補修ではラッカースプレーを使用して簡易的に修復する作業が一般的です。

反面、ラッカー塗料のデメリットととして「塗装が弱い」点が挙げられます。

塗膜が薄く、1液型塗料であるため、強固な塗膜にすることは不可能と言えるでしょう。

車の塗装を艶消し黒(マッドブラック)にする場合も同様で、ラッカー塗料で塗装してしまってはすぐに色褪せてしまいます。

ではプロの方達は、どのようにして艶消し黒の塗装を行っているのでしょうか。

一層目にウレタン塗料(または水性塗装)の黒を吹き、2層目の仕上げのクリヤーに艶消し剤を規定量入れることで自然と艶が消える仕組みになっています。

ほとんどの場合は上記のように2コートで完了しますが、特殊な車種(R35GT-R等)では新車時から3コートの艶消しブラックとなっている点に留意してください。

なお、ラッカー塗料の上塗りとして1液ウレタンや水性塗料を上塗りすると、収縮性の違いから縮れてしまうことが多く見られますので、使用する際には説明書等を参考にしましょう。

水性塗料

水性塗料は作業性、生産性ともに高いとは言えない塗料です。

塗装時の感覚としては1液型ウレタン塗料に近いものがあり、昨今の塗料と同じような感覚で吹き付けることが可能です。

その名の通り、ベースは「水」から作られており、気温がマイナスになれば凍ってしまいます。

凍結を防止するために専用のヒーターを設置し、常に塗料を一定以上の温度にしておく必要があるため、ラッカー塗料やウレタン塗料などの溶剤系塗料にはない、繊細な塗料と言えます。

さらに、経年劣化で水が腐敗してしまうため、管理にも相応のコストが必要になってくるでしょう。

塗装作業時の環境温度も重要になり、ブース内の温度を20℃前後にしておかなければ、塗料の乾燥が著しく遅くなり塗装作業が進んでいきませんので、簡易的なビニールブースなどの環境での塗装作業は困難を極めるでしょう。

他の溶剤系塗料とは異なり、ベースが水のため環境や人体への影響が最小限に抑えられている塗料ではありますが、設備投資と管理コストを合算して比較した場合、小規模の鈑金工場で補修塗料として水性塗料を導入するメリットは皆無ではないでしょうか。

ウレタン塗料

1液型ウレタン、2液型ウレタン、ハイソリッドウレタン。

鈑金塗装業界では、この3つが主流と言えるでしょう。

1液型ウレタンとは

塗料にシンナーのみを希釈する塗料を指します。

特徴としては、硬化剤が入っていないため硬化せずに乾燥のみであること。

塗料乾燥後にアルコール等の弱い溶剤でも、表面を拭くと筋が残ってしまいます。ガソリンなども同様に、給油中にこぼれてしまえば一部分だけが溶けてしまうでしょう。

1液型塗料は、ラッカー塗料同様に、それだけでは強固な塗膜を形成することは難しい塗料ですので、必ず上塗りで2液型の塗料をしなければなりません、

水性同様に1液型のメリットとして、メタリックやパールなどの粒子状の添加物が含まれている塗装を行う場合、ムラになりにくい特性があります。

メタリックは1円玉のような形をしており、この反射によってキラキラが再現されています。

メタリックの方向性を揃えることでムラにならず綺麗な塗装に仕上がりますが、2液型の塗料は非常にムラになりやすく、塗装作業に経験と慣れが必要になってくるでしょう。

鈑金工場の90%以上が現在でもこのウレタン塗料を使用して塗装を行っております。

カラーベース(色)のみを水性塗料で吹き付け、上塗りは2液型のクリヤーコートを使用している工場も少なくありません。

2017年3月末、関西ペイントが水性クリヤーの開発に成功したと発表しましたが、2018年の現在でも水性クリヤーの評判は良いとは言えないのが現状です。

ウレタン塗料を使用している工場が多ければ、塗料販売店が在庫を多量に抱えても損失は少なく、なおかつ緊急の際にも在庫としては抱えていることが多く見られますので、販売側と利用側。どちらにとってもウレタン塗料の利便性はまだまだ残りそうです。

2液型ウレタンとは

ウレタン塗料に硬化剤、シンナーを規定量配合する塗料を指します。

1液型ウレタンが開発される以前、メタリックやパールなどの難しい塗装においても2液型の使用が主流でした。

1液型よりもさらにムラになりやすく、乾燥と同時に硬化していくので、粒子が周りと馴染まずに「メタの目が揃わない」現象が頻発しました。

現在では1液型が主流のために、メタリック等の塗料では使用することは無くなりましたが、商用車などの白では、今でもクリヤーコートがされていない車種も多く、白のみを塗装して仕上げています。

もちろん、1液型やハイソリッドでも対応可能ですが、クリヤーコートがされていない塗装にクリヤーコートを吹くと、経年劣化で塗装の色味が黄色く変色してきます。

これを避けるために本来の塗装方法である白のみの塗装作業を行うことになります。

2000年頃までは、黒以外のソリッドカラーは全てクリヤーコートはされておりませんでしたが、現在の塗装では商用車クラス以外、全ての車でクリヤーコートが施されていますので、赤などの極端に耐候性の弱い塗料でも色褪せてしまうことが少なくなりました。

まとめ

ラッカー塗料は、乾燥は速いが塗膜が弱く長持ちしない。

1液型ウレタンはラッカー塗料同様に長持ちしないため、上塗りで2液型のクリヤーコートが必須。

2液型ウレタンはトップコートとして使用し、艶を出す目的として使用されることが一般的。